私は52歳で大阪府から山口県に移住し、自然豊かな環境で新たな生活を始めました。空き家バンクを通じて購入した3000㎡の土地には、古民家と広大な田畑が広がり、妻と共に自給自足の生活を目指しています。鶏を育てて新鮮な卵を収穫し、家庭菜園にも挑戦しています。しかし、移住生活には予想以上の出費や新たな挑戦が待ち受けていました。
生活費の内訳と実際の支出
移住後の生活費は月々約10万円です。内訳はざっくりと以下の通りです
- 光熱費(電気代):10,000円
- 交通費(ガソリン代):15,000円
- 食費:45,000円
- 通信費(Wi-Fi+スマホ代):9,000円
- 交際費:9,000円
- 浄化槽のメンテナンス代:4,000円
- 固定資産税の月々の負担額:3,000円
- 車検及びメンテナンス費:5,000円
家賃ゼロの恩恵と新たな固定費
大阪では月々約50,000円の家賃を支払っていましたが、移住後は空き家バンクで購入した物件に住むことで家賃がゼロになりました。しかし、固定資産税として年間約36,000円がかかり、月々に換算すると約3,000円の負担となります。これにより、家賃の支出は大幅に減少しましたが、新たな固定費が発生しました。
車関連の税金と維持費
田舎暮らしを始めてみて実感したのは、車が生活に欠かせない必需品だということです。公共交通機関が限られている地域では、ちょっとした買い物や通院、子どもの送迎など、あらゆる移動に車が必要になります。そのため、都市部で暮らしていたときにはあまり意識していなかった車に関する出費が、思いのほか増加しました。例えば、自動車税や重量税、保険料といった固定費に加え、定期的な車検費用やオイル交換、タイヤのメンテナンスなど、維持費が積み重なっていきます。
特に驚いたのは、道路状況や気候に応じた追加の出費です。山間部では急な坂道や未舗装の道路を走ることが多いため、四輪駆動車や耐久性の高い車種が求められます。また、冬には積雪や凍結に備えてスタッドレスタイヤへの履き替えも必要になり、それに伴う費用も決して少なくありません。雪かき用のスコップや融雪剤といった周辺の備品も、車とセットで用意する必要があります。
このように、田舎での車の役割は単なる移動手段にとどまらず、生活を支える重要なインフラのひとつだということを、身をもって感じています。
地域活動への参加とその費用
地域の草刈りや清掃活動など、地域活動への参加が求められます。私の地域では、1時間程度の草刈りに参加すると、刈払い機の燃料代込みで日当3,000円が支給されます。しかし、不参加の場合は3,000円が徴収されるため、参加しないと逆に費用がかかる仕組みとなっています。土日の作業が多く、参加できない場合の出費が痛手となることもあります。
空き家バンク物件 購入・改修にかかった費用の明細
空き家バンクで購入した物件の費用は以下の通りです
- 物件購入金額:約130万円
- 改修費用:約150万円(内補助金が100万円)
- 司法書士への支払い:約12万円
- 住宅診断費用:約9万円
- 水質検査費用:約1.2万円
これらの費用を合計すると、約3,000,000円。
これに加え、大阪府から山口県へ行く交通費(新幹線代)と宿泊代が加わります。
メルカリショップスとアルバイトによる収入源
移住後、新しい環境での暮らしが始まると同時に、自分なりにできる仕事を模索していました。その中で出会ったのが、メルカリショップスを活用した中古品の販売です。現在は主にCDやDVDといった小型のメディア商品を取り扱っており、地元のリサイクルショップやフリーマーケットを巡っては、一点ずつ丁寧に商品を選び、オンラインで販売しています。
扱っている商品の中には、すでに生産終了となった希少なタイトルや、コアなファンの多いジャンルも含まれており、時には思いがけず高値で売れることもあります。こうしたニッチな需要に支えられ、販売を続けてきた結果、昨年は1,000枚以上を販売することができ、少しずつ事業としての手応えを感じられるようになってきました。出品、梱包、発送といった一連の作業も効率化が進み、現在では毎月の安定した収入源のひとつになっています。
とはいえ、すべての作業を一人でこなすのは簡単ではありません。特に田舎暮らしならではの生活――家庭菜園の手入れや鶏の世話など――との両立が課題になることもあります。春から秋にかけては、家庭菜園とはいえ農作業の量も増えるため、どうしても出品や発送に割ける時間が限られ、結果として売上が一時的に落ち込むこともありました。
そうした状況に対応するため、最近では妻にも協力してもらい、検品や梱包といった作業を手分けして行うようになりました。誰かと作業を分担することで自分の負担が軽減され、事業としての安定感も増してきています。今後はさらに作業効率を見直しながら、取り扱う商品ジャンルの幅を広げていけたらと考えています。日々の暮らしと調和させながら、小さなビジネスを着実に育てていくことが、今の自分たちの目標です。
資格取得と地域での仕事
移住後の生活の一環として、これまでに取得していた危険物取扱者乙種第四類の資格を活かし、地元のガソリンスタンドでアルバイトを始めました。都市部とは違い、地域の人々との距離が近く、日々の業務の中でお客様と直接会話を交わす機会も多くあります。給油や点検といった基本的な業務のほか、地域の高齢者の方々に操作方法を説明したり、ちょっとした雑談を通じて信頼関係を築く場面も多く、単なる労働を超えた地域とのつながりを感じる仕事です。
資格を活かすことで、自分自身が地域社会の一員として貢献できているという実感があり、新しい環境の中で自信にもつながっています。また、業務を通じてこれまで知らなかった知識や実務的なノウハウを学ぶことができ、毎日が新鮮な経験の連続です。年齢を重ねてからの挑戦ではありますが、体を動かしながら働くことで健康の維持にもつながっており、心身ともに充実した日々を送れています。
さらに、移住を決意した当初から「年齢的に仕事がなかなか見つからないかもしれない」という不安を抱えていたため、あらかじめ資格取得やスキルアップに積極的に取り組んできました。結果として、その努力が現在の仕事や生活の基盤づくりに大いに役立っており、資格は“保険”ではなく“実用的な武器”になることを実感しています。
今後も、危険物取扱者としての経験を活かしながら、地域に根ざした働き方を続けていくとともに、新たな資格取得や学びにも積極的に挑戦し、将来的にはさらに幅広い仕事にも対応できるよう備えていきたいと考えています。
食費と買い物事情
田舎暮らしを始めて感じた意外な一面のひとつが、日常の食材にかかるコストの高さです。地元で野菜や肉類が生産されているにもかかわらず、それらが県外、特に都市部へと出荷されるケースが多いため、地元では十分に流通せず、地産地消が思ったほど進んでいない印象を受けます。その影響もあってか、特に野菜や肉類といった生鮮食品の価格が都市部よりも高めに設定されていることが多く、移住前に想定していた生活費よりも出費がかさんでいるのが実情です。
また、地元のスーパーは品揃えが限られていることが多く、特定の食材や調味料が手に入りにくいこともしばしばあります。欲しいものをすべて揃えるためには複数の店を回る必要があったり、時には車で片道30分以上かかる大型店舗まで足を延ばさなければならない場合もあります。そうした買い物のたびに、ガソリン代や移動時間がかかり、生活全体のコストや負担感につながっています。
もちろん、地元の直売所や農家から直接買える新鮮な野菜もありますが、常に一定の品揃えがあるわけではなく、タイミングによっては欲しいものが手に入らないこともあるため、計画的な買い物が難しい面もあります。そのため、必要最低限のものはあらかじめネット通販でまとめて注文したり、月に一度まとめ買いするなどの工夫が欠かせません。
田舎は物価が安いというイメージを持たれがちですが、こと食材に関しては、必ずしもそうとは限らない現実があります。今後は家庭菜園の規模を少しずつ拡大し、自給できる範囲を広げることで、生活費の抑制につなげていければと考えています。
自然の恩恵と心の変化
田舎の自然環境には、都会では決して味わえない美しさと奥行きがあります。春には梅や桜が咲き誇り、季節の訪れを街中よりもひと足早く感じ取ることができます。木々の間を吹き抜ける風の匂いや、山の斜面に群生する山菜の新芽に気づいたとき、自然の息吹を肌で感じられるこの暮らしに、心がほぐれるのを感じます。夏の夜には、頭上いっぱいに広がる満天の星空が広がり、天の川がくっきりと見えることもあります。街灯がほとんどない静かな夜は、虫の声や風の音が心地よく響き、ただそこに身を置くだけで、不思議と心が落ち着いていきます。
移住してからは、自然の微細な変化にも敏感になりました。「今日は風が柔らかいな」「空気が少し湿ってきたから、そろそろホタルが出てくるかもしれない」といった日々の小さな気づきが、暮らしに彩りを添えてくれます。以前の生活では気にも留めなかったような自然のささやきに耳を傾けることが、今では当たり前の感覚となりました。こうした自然との対話のような感覚は、田舎暮らしだからこそ得られる、何よりの贅沢であり、心の豊かさにつながっています。
また、暮らしの中での「つくる楽しみ」も大きな魅力です。鶏を育てて毎朝採れる新鮮な卵は、黄身が濃く、安心して口にできるありがたさがあります。家庭菜園では季節ごとに様々な野菜を育て、食卓に並べる喜びを感じています。春には葉物野菜、夏にはトマトやナス、秋にはサツマイモや里芋など、その時期ならではの味覚を自分の手で収穫できることは、何にも代えがたい経験です。これにより食費の一部もまかなうことができるうえ、食材の安全性や鮮度を自分の目で確認できるという安心感があります。
自然の中で手間をかけながら暮らすことは、決して楽ではありませんが、その分だけ心が満たされ、毎日に張り合いが生まれます。田舎での暮らしは、経済的な豊かさよりも、精神的な充実や生きる実感を大切にする時間。その価値を日々噛みしめながら、これからも自然とともに生きていきたいと思っています。
まとめ:田舎暮らしは“安さ”よりも“豊かさ”をもたらしてくれる
田舎暮らしを始めて、家賃や水道代などの固定費は大きく下がりましたが、その一方で車の維持費や地域活動への参加費、農機具などの初期投資といった、都市生活では想定しなかった出費も多くありました。さらに、食材が意外と高いことや、収入を得る難しさにも直面しました。
それでも、自然の中で四季を感じながら暮らす心のゆとりや、家族と農作業を楽しむ時間は、何にも代えがたい“人生の資産”だと感じています。
これから田舎暮らしを考えている方には、「準備」「情報収集」「資格取得」など、現実的な対策をしながら、自分の理想と現実をすり合わせていくことが大切です。田舎移住は節約の手段だけでなく、「どう生きたいか」を見つめ直すきっかけにもなります。焦らず、一歩ずつ、心豊かな暮らしを築いていってください。
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